Interview
HIRO SUGIYAMA(Enlightenment)インタビュー

 

Part.3 STRAYMと、現在のアートシーンについて
「STRAYMは、アートを理解してもらえる良いきっかけになる」(ヒロ杉山)

――「STRAYM」をどう思いますか? 自分が好きなアート作品があれば、100円からその作品の共同オーナーになれる、画期的なシステムだと思います。

ヒロ杉山 自分がこの話を初めてきいたときは、正直クエッションマークがついたんです。僕はずっと絵が好きで若い頃から絵を買ってきたし、世界にひとつしかないものを所有する優越感を楽しんできたので、作品を共同所有するという「STRAYM」がやろうとしていることに関して、はじめは「それってどうなの?」と思ったんです。だけど何千万円する作品を、若い人たちが買うことはなかなか難しいじゃないですか。それを100円から共同所有できるのであれば、その感覚はもしかしたらありなのかなと。実際にその絵が自宅にこなくても、所有書があって100円でもその絵に関して権利があるという感覚は、もしかして今の若い子たちには刺激的なことなのではないかと感じはじめています。

――自分が好きなアートをシェアしてでも所有できることを想像したら、アートに関する考えがまた変わるかもしれないですよね。アートの世界を深く知るきっかけにもなるだろうし、それに金額が発生することでアーティストにとっても良いことなのかなと。

ヒロ杉山 自分が所有権を持っている絵が飾られていて、友達をその展示会に連れてきて、「俺、この絵の権利少し持っているんだよ」とか、そういう感覚は面白いと思いますし。それをきっかけに、自分で絵を買ってみようという感覚にもなるかもしれないし。これは20年くらい前から感じていることなんですけど、日本人には絵を買う感覚がないんですよ。パリのアートフェアに作品を出したことがありますが、向こうでは層ごとにコレクターが分かれていて、初日はVIP、2日目から一般の人たちがたくさんやってくる。そのときに、一般の老夫婦が20万~30万の絵を買っていくとか普通にあるんですけど、絵を買うことが日常にある。

――ヨーロッパでは人々の生活にアートが密接にあるイメージがあります。買う人がいるから、アーティストたちも活動をしていけるというか。

ヒロ杉山 アートがコレクターが多ければ多いほど、絵は流通していく。日本は絵を買う人たちが少ない分、若手のアーティストは生活があるからアルバイトをしながら絵を描く。それが日本の今の状況だと思うんですが、そこでひと月に15万円の絵が1枚売れたとしたら、そのアーティストはその月は絵を描いていられる。そうすると絵のクオリティも上がるし、いい循環ができていくと思うんです。そういった意味で「STRAYM」がやっている内容で、人々が絵を買うきっかけになっていったらいいなと思いますよね。

――「STRAYM」が、日本のアートシーンを変える可能性もあるかもしれませんね。

ヒロ杉山 それともうひとつこのシステムが面白いのは、美術界には基本的にアート市場というのがあって、この作家はこれくらいの価格というのがなんとなく決まっているんですが、「STRAYM」の中で新たな価値観が作れるかもしれないということ。若くて無名でも、そのアーティストの作品をいいと思える人がいたら、それをどんどんみんなで所有していって、そのアーティストを盛り上げることができる。そういう風にきちんと平等な価値が作れることは、このシステムの1番の醍醐味なのではないかと思います。

「自分の内面を見つけて、自分は何を表現をしたいかしっかり見極めてほしい」(ヒロ杉山)

――アートシーンに期待すること、こうなっていけばいいなと思うことはありますか?

ヒロ杉山 今はアートバブルですよね。そのバブルによって、アートの価値がイコール値段みたいになってしまっている。そこはもうみんな冷静になって、作品の本当の価値観が金額になっていったらいいなと思います。価格が上がることはいいことなんですが、その人の作家が考えたコンセプトや、その人が積み上げてきた歴史だとか、そういうことをあまりわかっていない金持ちが、流行っているからとすごく高い値段で買ってしまったら、その値段がベースになってしまう。リヒターのように、今までやってきたことが積み重なって、時間が経つに連れてそれに見合った価格がつくのはいいんですけど、その感じが最近は崩れている。幾らでもいいから買うとなってしまうと、本来存在するアートの価値ではなく、バブルが作っている価格になってしまうのかなと思います。

――実際にアーティストであるヒロさんからお聞きすると重みがあります。これからの若い世代のアーティストたちの方々へ向けてエールをいただけますでしょうか?

ヒロ杉山 アーティストになるとしたら、一生それをやっていくと思うので、アート=人生だと思うんですね。だから売れることを目的にするのではなく、自分の内面に向かって、納得できる作品を作ることが大切なのではないかと思います。アート=お金みたいに、あの絵がいくらで売れたとかを目にしていると、そこに惑わされて売れている感じの絵を描けばいんじゃないの? という誘惑も出てくるだろうし。それで一時期にはお金が入るかもしれないけど、アートを作ることはそういうことではないと思うんですよね。だから自分の内面を見つめて、何を自分は表現をしたいか、それをしっかり見極めてお金に惑わされず、制作をするということが大事なのかなと。

――ヒロさんは作品を描いているうちに、ご自身が浄化されていくということはありますか?

ヒロ杉山 常にそれですね。そのために描いている感じですし。僕の目標は、70歳くらいのときに最高傑作を作ることなんです。日本は経済が豊かなので仕事もある。だからセンスがあれば、広告などの仕事をして30代や40代までに儲けることもできて、40代で収入のピークを迎えてしまう。だけど僕はそのピークと、クリエイティヴのピークは違うと思っていて、どんどん成長して、70歳や80歳になっても良い作品を作っていけるアーティストでありたいですね。

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Part.1 ヒロ杉山に聞く、現代アートとは
Part.2 「DROP SHADOW」と「ドローイング1995-2020」
Part.3 STRAYMと、現在のアートシーンについて

Profile

1962年生まれ、東京都出身。アーティスト、アートディレクター。東洋美術学校在学中よりイラストレーター湯村輝彦に師事。独立後、1987年に田部一郎と近代美術集団を結成。1997年に米津智之とエンライトメントを設立し、ギャラリー「ヒロミヨシイ」に所属。2002年に開催された村上隆キューレーションのグループ展「スーパーフラット」で現代アートとして世界から注目を浴びる。国内はもちろん、パリ、上海、ナポリなど海外での数々の展覧会で作品を発表。アートディレクターとしては、広告や雑誌を始め、CDジャケットのデザインも多く手がける他、映像方面ではPV制作やVJ、また空間演出を手がけるなど多義に渡り活躍。2020年は、六本木ヒルズA/Dギャラリーにて「ドローイング1995-2020」、阪急メンズ東京にて「DROP SHADOW」といった個展を開催。1月29日まで、阪急メンズ東京7Fにて「へたうま展 ヒロ杉山キューレーション」を開催中。

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