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80年代後半よりアートを軸に活動を開始して以来、イラストレーター、アーティスト、映像家、そしてアートディレクターとさまざまな分野において、国内はもちろんのこと、世界的にも活躍するヒロ杉山。先日、開催された「STRAYM」のグループ展示会では、作品「DROP SHADOW」を出展。常に作品を作り続け、現代ポップアートカルチャーを牽引する巨匠に、現代アートとは一体どのようなものなのか話を聞いてみた。
(Interviewer : KANA YOSHIOKA)
——ヒロ杉山さんにとって「現代アート」とは、どのような定義の元に存在するものだと思いますか?
ヒロ杉山 定義となると難しいものがあると思いますが、言葉で言うと「現代に作られた作品」。今日作られたものが現代アートであると思うし、現代アートを取り扱っているギャラリーに扱われていなければ、現代アートではないとも言えない。ギャラリーに所属していない人でも、現代アートを作っていますし。ただやはり、現代アートに求められるものは新しいものというか。これまでのアートの歴史の中にはなかったものや、誰も観たことのないものを作り出している人たち……というのが、僕が思う現代アートかなと思います。
——最新のものは、時代が進化とともに変化していくと思いますが、描く手法や時代背景など、さまざまな要素が加わってということになりますか?
ヒロ杉山 必ずしも手法とは限らないし、キャンバスにペイントしても新しいものは生まれる。手法やテクノロジーとかではなく、概念だったり、考え方だったり、表現方法がどんどん新しくアップデートしていく中での現代アートなのではないかなと思います。
——ヒロ杉山さん自身が、現代アートの存在を意識したのはいつ頃でしたか?
ヒロ杉山 初めて意識をしたのは、20歳くらいのころです。僕は湯村輝彦さんというイラストレーターに弟子入りをしたんですけど、事務所の本棚に現代アートの本がたくさん置いてあって、それを仕事の合間に観せてもらっていて、そこにそれまで観たことのないものがあって、それがアートなんだと。学校で習っていたピカソや(アンリ・)マチスなんかは観たことがありましたけど、現代アートを観たのはそこでが初めてでしたね。
——中でも鮮明に覚えている作品はありましたか?
ヒロ杉山 ポップアーティストで、クレス・オルデンバーグというアーティストがいますが、その人は、寸法を3メートルくらいで作ったり全部でかくするんですよ。とにかく日常にあるものを大きくするというコンセプトの作家の作品を見て、「これがアートになるんだ」と。あとクリストというアーティストは、議事堂を包んだり、島を包んだり、ものを包むことをするんですけど、どんどん包むものが巨大になっていくという、どちらもこれまでに自分がこれまでに学校で習ってこなかったことだったり、観てきたアートとは違ったので、それが面白いかったですね。
——大きなものは気持ちが動かされます。
ヒロ杉山 日常のものの寸法が変わるだけで、そこに人々が違和感を感じるんですよ。今までテーブルの上で観ていたものが、突然街の中でそびえ立つスプーンになっていたりして、価値観や視点を変えさせてくれることによってそれを観た人々が戸惑いを感じたり、何かに気づいたり。自分もアートでそういうことがやりたかったのだと思いますけど。
——ヒロさんは本当にさまざまなタイプの作品を作られますが、その中であえて現代アートを狙って制作されたことはありますか?
ヒロ杉山 特にはないですが、僕は20代にイラストレーターとして始まって、37歳で「Enlightenment(エンライトメント)」を立ち上げたんですけど、その頃からアートというものを強く意識するようになったんですね。それで40歳のときに「hiromiyoshii(ヒロミヨシイ)」というギャラリーに所属したんですけど、そこからアート作品を作らなくてはというより強い意識が芽生えまして、そこでコンセプトがすごく重要になってくると感じたんですよね。
——そのときに考えたコンセプトは、どのような内容でしたか?
ヒロ杉山 僕はいつもコンセプトとして、「狭間」というのがあるんですね。生と死の狭間であったり、この世とあの世の狭間であったり、寝ているときと起きているときの中間の意識だとか、そういうものをテーマにして作品を作っているのですが、初めて「ヒロミヨシイ」で個展をしたときは、「生と死の狭間」をテーマに、死んでいるけど、生きているような動物の剥製を使って作品を作ったことがあるります。あとは鏡をモチーフにして、鏡の向こうとこちらの入り口を、大きな鏡を使って作品を作ったり。抽象と具象の狭間だとか、「狭間」というコンセプトは今でもいつもテーマとしてありますね。
——40歳という年齢のときに「生と死の狭間」をテーマを選んだことには、何か理由があったのですか?
ヒロ杉山 祖父母が亡くなったときに死を意識したことがあったんです。例えば死んだ後にどこへ行くのかなとか。僕は25歳~26歳くらいの頃に精神世界にはまったことがあって、死後の世界とか、そういった類の本を読んでいた時期があったんです。だけどどの本を読んでも、しっかりした答えを見つけられずモヤモヤしたまま40歳になってしまった。それでそのときに、それを自分なりにアートで表現をしたらどうなのかなと考えて作品にしたんです。
――ところで星の数ほどアーティストが存在する中で、現代アーティストとして認められる瞬間のようなことはあるのでしょうか?
ヒロ杉山 僕が思うには瞬間はないと思います。徐々に現代作家として見られていくというか。最近は特にストリート系のアーティストが出てきていますが、例えばバリー・マッギーなどは、最初はスプレーを使ってストリートや街に描いていたと思うんですけど、それがある日プラダの美術館で展示されて、少しずつ現代アート系の人たちに注目されストリートから現代アートの方に移行していったと思うんです。そういう風に、本人は基本的には変わらなくても、周りの見る目が変わっていくといった感じなのかなと。
――他にはバンクシーやフューチュラ2000、カウズなど、2000年代以降はストリート出身のアーティストたちの作品が現代アートとして認知されていますが、そこには共通する何かがあるのかなと思うのですが……。
ヒロ杉山 コンセプトなんじゃないかなと思います。グラフィティという表現的に格好いいものを壁に描いていたところに、バンクシーのようにすごく意味を持たせたりだとか、そういう風にコンセプトと表現がいい感じにマッチしている人たちが、現代アーティストと言われだすのかなと思います。
Profile
1962年生まれ、東京都出身。アーティスト、アートディレクター。東洋美術学校在学中よりイラストレーター湯村輝彦に師事。独立後、1987年に田部一郎と近代美術集団を結成。1997年に米津智之とエンライトメントを設立し、ギャラリー「ヒロミヨシイ」に所属。2002年に開催された村上隆キューレーションのグループ展「スーパーフラット」で現代アートとして世界から注目を浴びる。国内はもちろん、パリ、上海、ナポリなど海外での数々の展覧会で作品を発表。アートディレクターとしては、広告や雑誌を始め、CDジャケットのデザインも多く手がける他、映像方面ではPV制作やVJ、また空間演出を手がけるなど多義に渡り活躍。2020年は、六本木ヒルズA/Dギャラリーにて「ドローイング1995-2020」、阪急メンズ東京にて「DROP SHADOW」といった個展を開催。1月29日まで、阪急メンズ東京7Fにて「へたうま展 ヒロ杉山キューレーション」を開催中。
Enlightenment
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