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06 Interview
TOMOKAZU MATSUYAMAインタビュー

 

Part.2 松山智一に聞く日本のアートシーン
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に、美術家として活動を繰り広げる松山智一。異なる時代や文化を融合し新たな解釈を加えることで昇華された松山の作品は、まさに境界が消失しつつある現代社会を捉えている。アートを通じて、人々に新しい景色を見せてくれる松山氏の作品は、近年、世界から注目を集める。その松山氏、実は「STRAYM」に関わる2人、長崎幹広とは中高の同級生であり、岡沢高宏とは原宿カルチャー時代からの友人でもある。インタビューは、この夏に松山氏が日本へ一時帰国をしていた際に行った。前半はストリート&ボードカルチャーに魅せられ、そこからアートへの道を進んでいった松山氏の経歴と自身のアートに対する考えを紹介。後半は、現在の日本のアートシーンと「STRAYM」について話を聞いてみた。 (Interviewer : KANA YOSHIOKA)

―― 松山さんは、日本のアートシーンを思いますか?

松山智一 2つありまして、クリエーティビティー全般においては、世界に影響を及ぼすトップクラスのものが多く存在すると感じています。もちろんそうでないものも多くありますが笑。NYはやはり世界のマーケットの基準を形成するだけの影響力がある場所なので、日本が持つ有機性にはかける部分があるようにも感じます。マネタイズされ、産業化されたものが生き残ることができる場というか。結果を常に求められる場所であって、成果主義に偏りがちなので、そうした意味ではここで戦っていける強度を持った表現が生き残っていく。一方でフレッシュな視点の若々しいものはNYまで届かないという現実もあります。ただ、ここは結果を出すことができればキャリアや年齢、国籍、人種を問わず戦うチャンスに満ちた場所、カテゴライズから解放された場所とも言えると思います。20年もいると麻痺してしまい忘れてしまいそうになりますが、競争は加速度的に熾烈さを増していますし、ふるい落としも強烈になっていきますよね。
その点、東京にはNYの自由とはまた異なる自由と暖かさがあると感じています。その自由さの中で独自の言語がはぐくまれているように思います。みなが生き抜くことに必死なNYで活動を続けることには、色々なしがらみや葛藤もついて回りますよね。作家同志、キャリアステージが変わってしまうと友達ではいられないというすごくシビアな世界だし、タフでないと立っていられない場所ですよね。だけど東京は横の繋がりを大事にしてくれるし、その中でクリエイティヴを共有している仲間意識が強みになっているのではないかと、外から見ていると感じます。だからこそ、僕も自分ならではの立ち位置で東京のカルチャーに貢献したいという気持ちがありますね。もうひとつですが、アートに関してのマーケットが元気になっていると思います。だけど過熱のスピードにマーケットの成熟が追い付いていない感は否めないですね。マーケットのドライブがあった際によく起こる現象で、日本でもバブル期に日本画で似たような状況がありました。ガラパゴス現象が起きていることは多くの方が最近言及されているので僕からはあまり触れませんが、世界のマーケットの原理と日本のマーケット原理が全く重ならない状況になってきています。これは以前中国でも起こったことで、国内の作家へのアクセスのしやすさと日本人作家をサポートしたいという日本人の気持ちが少なからず歪さを生み出してしまっている可能性があるのかもしれません。主に欧米諸国やアジアの一部がマーケットのインフラを主導している現実があります。どの視点で見るのか、もう少し冷静に購入動機を持つべきではないでしょうか。日本でアートの消費が増え市場が拡大することは良い面も多くありますが、持続性がなければいつか市場は弾けますよね。この点は作家として、そして海外で活動するものとしてお伝えしたいことです。アートは見るものではなく、読み物なんですよ。アートはインテリアでもない。だからこそ作品への理解やアートヒストリーへの理解がマーケットを成熟させるためには必要不可欠なのだと思います。

「Boom Bye Bye Pain」 2021 KOTARO NUKAGA(Tokyo)

―― 日本のアートシーンは、どのようにしたらよくなっていくと思いますか?

松山智一 いくつかありますけど、ひとつは僕ら作家の仕事でもあります。アーティストが文化を作っているという認識を持ち、社会発信への意識を徹底する。作品そのものはきっかけにすぎず、アーティストはその一挙一投足にまで意識を持つべきです。その意識が作品に説得力を持たせ、鑑賞する人への啓蒙活動になります。もうひとつは、いろんな人が介入し栄えることには意味があることだとは思います。ただ繰り返しですが栄えても続かなければ意味がない。様々な動機があると思いますが、人やお金が集まっているからなんとなく引きつけれるのではなく明確な動機を持つことは重要だと思います。 アートに証券性はもちろん孕んでいますが、アートは投資としての転売性は高くありません。昨今、多くのメディアでアートが投資対象としていかに優れているか、転売性があるということが喧伝されていますが、異なると思います。実際に購入したもので転売できるものは限られたごく一部の作品で、そうした意図で購入することに信頼性があるとは思えません。投資として有効にするには長期間、一定数以上の数を持つ必要があり、それには年月も莫大な資金も必要となりますので実行できる人も投資という意味で成功させられる人も限られてきますよね。文化として成熟する、もしくは歴史として確立した後にはじめて本当の意味での価値が生まれるので、スタビリティーはありません。ぼくらが生きている世界は大変危うい場所です。日本のオークションで取引されている作品でも海外の大手のオークションでは一切取り扱わない作品が多くあるというのが今の現実だと思います。それはその作品の良し悪しではなく、海外のオークションハウスが価値を担保するだけの信頼性が無い、ふるいに残るだけの結果をまだ残せていない作品という意味です。アートはそんなに短期間に価値を確立できるものではないということでしょうか。短期保有で利益確定みたいな世界から最も遠いところにあるものです。好きなものを何十点、何百点も苦心して購入し、何年後もしかしたら何十年後かに100倍の価値を持つ作品が一つあるかもしれないという世界です。

―― アート作品を、国内だけの需要で証券的な目線で見ている人たちも多いですよね。

松山智一 日本の若いアーティストが突然何千万円という高額で落札されることがさほど珍しくない状況ですよね。日本のアーティストをサポートしたいという気持ちがあるのであれば、それは凄くいいことだと思います。実際アジアにはそういうお金の使い方をしている国もありますよね。しかし世界的に有名な、または歴史的に重要な作家の作品を変わらない金額で購入できるという現実があるので、やはり購入の動機がどこにあるのかについては作家の立場としては考えますよね。投資ゲームの感覚で作品を購入することにただただ反対を唱えるほどナイーブではないですが、ならば世界のマーケットをもっと見ること、異なる複数の視点を持つことで日本のマーケットがより早く成熟するのではないかと感じることがあります。

「Accountable Nature」 2020-2021 Long Museum West Bund(Shanghai, China)

―― 「STRAYM」についてどう思いますか?

松山智一 「STRAYM」に関しては、2つ思うことがあります。まず作り手の目線で言いますと、僕はアートを買うという動機の部分でブロックチェーンを信じていないんです。僕の絵を10人や、20人の人たちに消費されたいとか微塵たりとも思いませんし、先述した理由と同じです。アートを購入/所有する意味や動機は何なのか?やはり作品は一点として存在すべきだと思っています。 ブロックチェーンで複数が連帯して所有する意義をどこに生み出せるのかが作家の立場ではまだ見えていないのかもしれません。アートはその作品の重要性や価値が形成されていく上でだれが所有したのかという来歴も非常に重要な要素の一つです。なぜならアートそのものに金銭価値はなく、こうした複合的な要素が相対的にレイヤー化されて価値が作られていくからです。つまり、作家自身で自分の名作を定義することはなかなかできないということなんです。歴史の中で作品が残り続け、物語が構築されていくことでより重要性が増して、価値が高まっていきます。だから著名な作家でも作品次第で価値が10倍以上異なったりするのはそういうことからなんですけど、このようにして人、時間、場所の介入があって価値が確立するものがアートだと考えます。 なので、「STRAYM」のように共同所有をすることの良さというのは、アートへの入り口を作る=動機づくりだと思います。 アートの入り口として、100円で好きな作品を共同所有できるという、経験作りだと思っているんですね。結果、共同所有という経験を通じて、次はひとつ好きな作品を買って欲しいなと思うんです。自分自身でもアートを複数所有していますが、アートと一緒に暮らすということは家の中に学び、自分の感情を喚起してくれるエネルギーの塊があるようなものです。 作り手は全身全霊で作品を使って作っていますから、アートには空間とそこに存在する人に影響を及ぼす力があるんですね。なので「STRAYM」を通じて、ひとつ作品を買うきっかけを作ってもらったらいいなと思いますね。世の中に良い作品はたくさんあるし、好きなアートと暮らすと、その人の暮らしが何倍も豊かになると思いますよ。 つまるところ、我々アーティストサイドがエデュケーション(教育)していかないといけないんですよね。

―― そのステップにも、「STRAYM」はいい役割を果たしますね。

松山智一 日本でもアートを共同シェアしようというシステムができて、今は誰が一抜けするのかが楽しみですね。NFTに関してはまだまだ秘められた可能性があると信じています。NFTでしかできない表現言語はエディションという概念に近しいようにも捉えられますが、版画のそれとは全く違うべきであると思います。僕は版画を作っていますけど、版画のようなクラフトマンシップと質感を追求しつつもクオンティティとクオリティを並立できるものに対していかに差別化ができるのか。消費という概念が変わりつつある現代ですが、アートはそれゆえさらに需要が増したように感じます。SNSで情報化がさらに進化し、これからデジタルライフがより影響力を持つ時代、端末で自分のデジタルコレクションを紹介する日が刻々と近づいており、新しいプラットフォームとしての可能性の高さを感じていますが、本当の意味での先駆けはまだ生まれてきていないようにも感じています。大変楽しみです。新しい概念が生まれて、多くの人が高い期待値を持って参入している様子にドキドキしますね。

―― 「STRAYM」のコンサルティングのようです(笑)。

松山智一 「STRAYM」に関して話を聞いたときに、アート界が活性化することでもあるし、やってくれたことに対して多いに感謝の気持ちがあります。アートに介入する人が増えること自体はとても健全なことなので。文化サイドからサポートする形で、啓蒙してもらいたいと凄く思っています。また、関わっている人たちはクリエーターが多く、長い年月の付き合いがあったからこそ、意見交換レベルですが、話を定期的に聞いたりしていました。裾野が広がることで新しい展開がうまれるのであれば、そうあるべきです。NYではこのような良い意味でのぶつかり合いから新しいものが生まれています。

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Profile

松山智一 TOMOKAZU MATSUYAMA

1976年生まれ。岐阜県出身。幼少の頃をアメリカで過ごし、中高時代は暁星国際学園、上智大学経済学部卒業後、2002年に渡米しニューヨーク私立美術大学院プラット・インステュートコミュニケーションズ・デザイン科を首席で卒業。ニューヨーク・ブルックリンを拠点にアート活動を繰り広げ、絵画を中心に、彫刻やインスターレションなど、ギャラリーからパプリックスペースまで幅広い場所にて作品を手掛ける。これまでにニューヨーク、ワシントンD.C.、サンフランシスコ、ロサンゼルス、日本にて個展を開催。LACMA、マイクロソフト コレクション、ドバイ王室コレクション、その他名だたる箇所に作品が所蔵されている。2019年、ニューヨークのハウストン・バウリー・ウォールに巨大壁画を完成させ、TBS番組「情熱大陸」で特集されたほか、国内外多くのメディアに取り上げられる。2021年5月、日本国内初作品集「IN & OUT」をリリース。

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