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09 Interview
RKインタビュー

 

瞬時に「イイね!」圧巻のインパクトを撮り続けるフォトグラファー
2022年1月現在、Instagramのフォロワーが74.5万人という数字を持つフォトグラファーのRK。iPhoneで写真を撮り始めたのは約10年前。そこから現在まで、肉体的にも精神的にも極限を攻め、街、自然など国内外にて撮影をしてきた。アナログとデジタルの間で経験を積んだRKの作品は、リアルな光景を強く美しく映し出し、これまでに観たことのない世界観を描く。この度「STRAYM」のNFTに3つの作品を出展を果す、今最も注目すべきフォトグラファーを紹介しよう。 (Interviewer : KANA YOSHIOKA)

―― Instagramを中心に写真を紹介されていますが、iPhoneで写真を撮り始めたきっかけは何だったのですか?

RK Instagramに関しては、アプリができて3カ月くらいから始めました。その頃は、あれ買った、ここ行った、何食べたとか普通の写真だったんですけど、AFE (ランニングチームATHLETICS FAR EAST)に入って毎週参加しているうちに、「毎週来るんだったら、写真撮れや!」って、半分強制的にファウンダーのDKJ氏に言われまして(笑)。一眼レフで撮影するカメラマンがいたんですが、彼はコースで待ち伏せをして撮っていたんです。だからラン(走り)についていける僕がiphoneを持って一緒に走って、みんなが走っているところを撮影をして、それをAFEのInstagramのアカウントに載せることをしていたんです。それをやっていくうちにどんどん写真に興味を持ち始めました。

―― そのときの撮影では、どのようなことに気を使っていましたか?

RK いろんなランニングチームがある中で、 AFEはデザイナーやモデルなどクリエイティヴなことをしている人たちばかりで、他とは一線を画していたので「格好良く」はかなり意識をして撮っていました。それで撮っていくうちに何が格好良くて、何が格好悪いかがわかってきて、自分の写真のフィールドも広がっていったというか。

―― そこから撮影する写真はどのように進化していきましたか?

RK Instagramをはじめ、SNSの写真ってポートレートが不人気なんですよ。ポートレート自体はいいんですけど、寄って撮るとなるとイイね!がつかなくなる。だから自分の名前を世に知らしめるためには、ポートレートを撮るよりは、ランドスケープやシティスケープを撮る方がいいんです。何故かというと、みんなそこに行ってみたい、旅行をしてみたいというのがあるからなんです。

―― ランドスケープはどのようにして撮影されているのですか?

RK 主に望遠レンズを使って遠くから撮影をしています。望遠で遠くから撮ると圧縮されるから、情報量が多い写真になっていく。ドローンを使って撮影もします。そういう写真が撮れる場所を選んでからそこへ行くんですけど、僕の作品は凄くパクられるんですよ。それでパクったヤツの方がバズっちゃうと、そいつのものになってしまう。現代の課題ですよね、SNS世代の。サンプリングどころの話ではない、丸パクリですから(笑)。だから人と同じ場所へ行っても、他の人と同じようにならないように撮るにはどうしたらいいか凄く考えます。

―― バイクが密集して信号待ちしている写真はどちらですか?

RK ここは台北では有名な場所です。毎日これくらいのバイクがいて、1番凄い月曜日の朝に行きました。よく撮られている場所なので、これをInstagramに載せたときにどうインパクトが出るのかを考えてこの構図にしました。タクシーが並んでいる写真は中国の重慶です。空港を出たところで撮影したんですけど、一眼レフで撮影をしていたら警備員が「一眼レフで撮るな、携帯ならOK」って言うから、「なんでだよ!」ってブチギレまして。その間にワンシャッターだけ押した喧嘩中の写真になります。僕が帰った後にこの写真が中国でバズって、撮影した場所に「写真スポット」っていう紙が貼られまして、「お前よくやった!」「これでみんな自由に撮れる!」と言われるみたいな(笑)。

―― 写真をエディットする際に気を遣っている部分はありますか? 合成は多く取り入れる方ですか?

RK エディットの部分で気をつけているのは、黒の部分をどう見せていくか。黒が綺麗とよく言われるんですが、トーンカーブや、シャドウでコントラストを調整してます。合成はたまにします。だけど結局は何が重要かって、合成か合成でないかとか、フェイクかフェイクでないとかではなく、誰かが観たときに感動するか、しないかだけなんですよ。合成しようがしまいが別に関係なくて、第三者が観てその写真が「おお!!」ってなれば、それでOKなんです。感動してもらえれば、それが作品でありアートなんで。

―― 事前にロケ場所を調べたとしても、現地に足を運んでからどこを撮影するか決めることが多いですか?

RK そんなことばかりです。むしろロケハンは現地でしないとですね。僕の持論だと、スポットの近くに誰も見たことのないスポットがある。それは実際に行かないとわからないじゃなですか。だからこういうところに行きたいなと思って行く場所を決めたら、その周りを全部調べてスポットを自分で探すということは毎回してますね。

―― 素晴らしいパッションをお持ちだと思うのですが、何がそのパッションを生んでいるんですか?

RK パッションでしかありません(笑)。そもそも元から承認欲求はあった方で、「僕はここにいるよ」という気持ちが強いんだと思います。今はとにかく写真を撮りたい一心で「撮れるまでは帰れねえ!」みたいな。僕はインパクトだけでも、みんなの指が止まってくれるだけ、それだけいい。だけど本当はポートレートがやりたいんです。頂く仕事はポートレートが多いんですけど、人と対話をして写真を撮るのはやっぱり楽しい。それに人を撮らないとフォトグラファーとしての価値も上がらないですしね。これまでに村上隆氏、TYGA、ナオミ・キャンベルらを撮らせてもらいましたけど、それなりにいろいろな部分でプラスになりました。

―― 携帯で撮影をして欲しいという仕事の案件はありますか?

RK もともとiPhoneで撮っていたからかもしれませんが、実際にはめちゃくちゃ携帯で撮影をして欲しいという依頼がきます。だけどそれはAppleではないのでほとんど断っています。僕はAppleが大好きなんですよ。Apple信者だからiPhoneが出たときは衝撃で、iPhoneでどれくらい撮れて加工ができるかということが楽しかった。だから一眼レフには興味がなかったんですけど、iPhoneで写真を撮り続けているときに仕事の依頼がきて、「RKさんは何を使って撮っているんですか」と聞かれて、「iPhoneしか使っていない」と返答したらその案件がなくなってしまったことがありまして。そこで限界を感じて一眼レフを購入したんですよ。しかし買ったはいいけど、シャッタースピードもわからなければ、F値もISOもわからなくて(笑)。最初に買ったのはSONYのα7IIです。ざっとカメラを見て「1番軽いしデザインもいい、昔サイバーショット(SONYのコンデジ)使っていたし、いいか!」って腑に落ちたのがそれだったんです。

―― 「STRAYM」に出された3点の作品がどんな内容か教えていただけますでしょうか。

RK エスカレーターの写真は秋葉原ですね。一眼レフに切り替えて間もない頃の写真なんですが、撮影をした日に友達のフォトグラファーが連れてきたモデルさんを撮りました。ちょうど同じ日に、秋葉原のおじいちゃんを撮ったので今でも覚えてます。新宿の写真は、ギリギリのところまで行って撮影しました。僕が1番楽しく撮影をしていた時期に撮った写真です。もう、シャッターを切る手が震えるんですよ。こういう作品は撮れたときは嬉しいですけど、撮れないことも多いですから、いろいろ場所を探しましたね(笑)。道路が交差する写真は上海です。ここは窓越しではなく落ちたら真っ逆さまな場所なんです。生きるか死ぬかというギリギリな感じが楽しかったです(笑)。どれも2017年くらいに撮影した写真なんですが、今回は昔の写真を出したかったんです……というのも、僕自身が昔の自分の作品の方が好きなんで。

―― これから撮影をしてみたい題材や場所はありますか?

RK 建築が好きなんですよ。代表的ところで言うと、ザハ建築などは大好物です。中国にドラムタワーと呼ばれる古い木造建築様式があるんですけど、凄く好きで中国の奥地まで撮影しに行きました。アジアの建築に興味があるのでまた撮りに行きたいですね。

―― これからも東京をベースにして活動をしていこうと思いますか?

RK 東京って世界的に見てもブランド価値があるので、東京ベースでの活動は外せないですね。ただ東京ベースでやっているという名前を頂きたいくらいで、僕は日本人も日本文化もあまり好きではないんです。ロゴが和っぽいのは海外の人が好きでしょ、ってところを狙ってやっていたりするので。

―― 気になる写真家はいますか?

RK 上海のLezlie Zhangは凄く気になります。格好いいですね。色彩がとても綺麗で、彼の写真に毎回出てくるミューズ的存在のモデルさんがいて、その子がまたいい味を出しているんですよ。まだ20代後半ですが、映像も凄くて、どうやって撮っているんだろうと思いますね。彼のような色を出すにはフィルムを勉強しなくちゃダメなのかな……。

―― RKさん自身はフィルムに興味ありますか?

RK 僕はフィルムに全然興味がないんです。ビデオも動画も興味ないので、そこに関しては人にやらせています。僕のあの色を動画で出すことは難しいんですよ。もし出せるとしたら、全部写真で撮っていかないといけなくて、そうするととんでもないお金と労力がかかってしまう。ただソニーのα1であれば連写で動画が撮れるので、それで1枚ずつエディットして繋げればできるかもしれません。それを今度リールでやろうと思っているんですけど。

岡沢高宏 NFTも出てきて今は本当にいろいろな表現方法があるけれど、今後どんな価値観が生まれていったらいいなと思う?

RK 僕はいまだにNFTで買う側の人たちの気持ちを理解していないので、どう解釈をしたらいいのか迷うんですけど、この間若い人たちと話をしていてわかったことがありました。今、何が彼らのステイタスかというと、メタバースの中でどこの部屋に入れたのかとか、そこで何を着ているのかとか、そんなことを競っているんですよ。それはデジタル上の価値観でもあるなと思うんですけど、その一方でNFTのやり方は、一度は崩壊するんじゃないかと予想しています。なんかインターネットが出てきた頃と似ていて、NFTも出だしの勢いはありますけど、定着するには時間がかかると思うんです。たぶん一度冷静になる時期がきて、また構築されていくのではないかなと。

岡沢高宏 そういう意味ではフィジカルなファインアートと、デジタルを通してのアートの価値、この両方があった方がいいなとは思うんだけどどう思う? RKくんは後者だよね。

RK やっていることはデジタルなんですけど、本来は違うんですよ。DJの話じゃないですけどデータで曲を持っているよりも、アナログレコードを持っていたいなって思う方ですからね。アナログレコードを回しているときの方が感覚がわかるし、「僕、これもっているんだぜ」って、人に自慢できるというか。

―― となるとご自身の作品に関して、人々にはどういう感覚で所有してもらいたなと思いますか?

RK 自分の作品を自慢するにはNFTは便利なんですけどね。うーん、何でしょう……だけどNFTで買う内容が、これからは画像ではなくなってくるのではと思います。写真ではなくなってきて、何かしらコピーができないような。もちろん今もNFTの作品はコピーしてはいけないですけど、実際にはできちゃうじゃないですか。それが今後、どのような展開と価値観になっていくかですよね。

―― まったく異なるスタイルのアートがこれから出てくる可能性もありますよね。

RK 完全にありますね。だから凄く可能性があるんでしょうけど、本当に未知。今後は二次流通で、誰が買っていったのかも重要になっていくと思うこともあります。ただアーティストの人たちは、ここを収入源のひとつとして見ていかないと、たぶん生活ができなくなってくると思うんですよね。僕が何故そこに危機感を覚えるのかというと、海外の人はPayPalで仮想通貨を使えても、日本ではまだ全然ダメ。マネタイズ化を今後どうするのか、日本政府の芸術に対する意識の低さでもあると思うけど、日本は本当にそういうところが遅い。そこをどうしていくのかも今後の課題だと思います。

岡沢高宏 「STRAYM」のようなカタチを取る販売プラットフォームで、ここはこうした方がいいとかある?

RK やっている人たちを見れば信頼できることは明らかなんですけど、もっとシャウトアウトしてもいいんじゃないかなと思います。アートを分割して買うというシステムってめちゃくちゃいいことだし、凄いことなんです。価格の高い作品は誰しもが手に入れることはできない。だけどデジタル上で権利を分割して売ればみんなが所有できるわけで、シェアするということは今の時代に合っていると思うんで。

―― NFTしかりデジタルの世界で挑戦してみようと思うことはありますか?

RK 今度、NFTのプラットフォームを使用している「XYZA」とうところコラボをするんですけど、CGに初トライしようかなと思っています。でかいモニターとかに自分が作った作品がリンクして、そいつが毎回天気とか伝えてくれたりとか。だけどこれは作品なんだよ、みたいな。

―― そうなると人々の生活に入ってくるアート作品ということになってきますね。

RK そうそう。生活の中に飛び込んでくる感じはいいなって。siriやAlexaとかがモニターとリンクされて、そこにNFTの作品が出てくるんですよ。だけどそこにはIDやパスワードを打たないとログインできないから、もちろん買った人たちしか見ることはできない。そこに好きなアーティストの作品がNFTで限定10個とかで売り出されたら、きっと欲しくなりますよね(笑)。そういうことをやってみようかなと思っています。



Profile

RK

1982年生まれ、茨城県出身。高校時代は野球部に所属し甲子園出場の経験を持つ。高校卒業後は文化服装学院へ通いながら、DJとしての活動をスタート。グラフィックデザイン会社に勤めDVDのパッケージデザインを担当している時期に、ランニングクルー「AFE TOKYO」に出会い、2013年よりメンバーとなりiPhoneで撮影をする専属フォトグラファーとなる。現在は東京を拠点に、アジアを中心に世界のさまざまな絶景にて撮影を決行。InstagramなどSNSの総フォロワーは89万人を誇る写真家。

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