- 海外取引所のトラベルルールって何?
- トラベルルールを回避する方法を知りたい
当記事を訪れた方は、トラベルルールに関して上記のような疑問や悩みをお持ちではないでしょうか?
海外取引所のトラベルルールは複雑なものではなく「ただ金融庁などに名前や仮想通貨アドレスが共有されるだけ」です。
ルールの施行後、各取引所で一部送金不可の取引所はできましたが、使える取引所やウォレットを使えば良いため、特に問題はありません。
それでも、審査にかかる時間を短縮したいなどの理由で「トラベルルールを回避したい」というケースもあるでしょう。
本記事では、トラベルルールの内容や各社の対応状況、送金への影響や回避方法などを解説します。
各国内取引所から送金できる海外取引所も一覧にしていますが、それぞれの取引所の詳細を知りたい場合は「海外仮想通貨取引所ランキングおすすめ比較10選」の記事を参考にしてみてください。

海外取引所のトラベルルールとは?

海外取引所のトラベルルールとは何か、要点をまとめると以下の通りです。
- 送る人と受け取る人の情報を対象国で共有・通知する
- 対象国の取引所でなければ共有義務なし
- 通知対象国一覧
それぞれの要点について詳しく見ていきましょう。
送る人と受け取る人の情報を対象国で共有・通知する
トラベルルールとは「仮想通貨の送付人・受取人の情報を取引所が通知・共有する義務」のことです。
より簡単な表現では「仮想通貨を送る人・受け取る人の情報を、対象の国で通知・共有する」といえます。
通知の義務が課されるのは取引所ですが、トラベルルールを提唱しているのはFATF(金融活動作業部会)という国際機関です。

そのFATFが各国の金融庁に対して導入を求めているため「FATF>各国政府>取引所」という順番で、義務が課されています。
なお、トラベルルールが規定されている法律は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で、条項は「第十条の三、第十条の五」です。
トラベルルールの正確な定義を、箇条書きで分けて書くと以下の通りです。
- 暗号資産・電子決済手段の取引経路を追跡することを可能にするため、
- 暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者が、
- 暗号資産・電子決済手段の移転時に
- 送付人・受取人の情報を通知する義務
上の文章を噛み砕くと、以下のようになります。
- 仮想通貨の流れを追うため
- 取引所が
- 送金時に
- 情報を通知する義務
トラベルルールが始まった(施行された)のは、2023年6月1日からです。
上記の法律(犯罪収益移転防止法)が同日に改正されたことで、トラベルルールがスタートしました。
氏名・ブロックチェーンアドレス・住所などをシェア
送る人・受け取る人の情報は、それぞれ以下の内容がシェアされます。
立場 | 通知される情報 |
---|---|
送る人 (送付人情報) | ・氏名 ・住居 or 顧客識別番号等 ・ブロックチェーンアドレス |
受け取る人 (受取人情報) | ・氏名 ・ブロックチェーンアドレス |
両方共通するのは「氏名、ブロックチェーンアドレス」です。
送る側はさらに「住所」が追加されます。
「顧客識別番号」は、本人確認によって得た情報で区別される番号で、いわば「世界版のマイナンバー」です。



住所も当然含まれますが、生年月日や性別なども同時にシェアされるかは不明です。
「住所又は~」と記載されているため、識別番号から得られる情報の中でも、住所だけをシェアする可能性もあります。
対象国の取引所でなければ共有義務なし
トラベルルールの対象となるのは、FATFの要請に応じた国だけです。
対象国は次の段落で一覧にしますが、一覧にない国の取引所では共有義務がありません。
つまり「自分や相手の情報を金融庁などの公的機関に把握されたくない」というトレーダーは、対象国以外の取引所を使うことになります。



しかし、当然ながら通常の取引で「金融庁に知られて困る」ということは何もありません。
取引の相手側が「知られると困る」とあなたに伝えてきた場合、相手がマネーロンダリングや脱税をしている可能性があります。
そのため、なぜ知られると困るのかを詳しく確認し、悪質な行為に加担しないよう注意が必要です。
通知対象国一覧
トラベルルールの通知対象国を一覧にすると、以下の20カ国です(2025年現在)。
- アメリカ合衆国
- アルバニア
- イスラエル
- カナダ
- ケイマン諸島
- ジブラルタル
- シンガポール
- スイス
- セルビア
- 大韓民国
- ドイツ
- バハマ
- バミューダ諸島
- フィリピン
- ベネズエラ
- 香港
- マレーシア
- モーリシャス
- リヒテンシュタイン
- ルクセンブルク
上記は「日本の金融庁が指定している国」であるため、他国の政府では対象国が異なる可能性があります。



日本人の場合は「日本人や上記の国の外国人」と取引する際は、両方の情報が通知・共有されるということです。
半分ほどはケイマンやジブラルタルなどマイナーな国ですが、これらの国はタックスヘイブン(租税回避地)として有名であるため、租税回避を防ぐ目的があります。
トラベルルールによる影響・デメリット


トラベルルールの始動による影響やデメリットをまとめると、以下の通りです。
- 取引所ごとに出金や送金をできない(他の)取引所がある
- 入金・出金に時間がかかることがある
- 審査によって送金不可となることも(通常は問題なし)
トラベルルールの導入自体は当然良いことですが、送金時間などへの影響について、事前に理解しておきましょう。
取引所ごとに出金や送金をできない(他の)取引所がある
トラベルルールによって取引所が受ける影響は「その取引所がどの国にあるか」によって異なります。
取引所の所在国によっては「この国の取引所には出金や送金をできない」というケースもあります。
例えば国内取引所のコインチェック(Coincheck)の場合、Bybit(バイビット)やBitget(ビットゲット)には送金できます。



しかし、MEXC(エムイーエックスシー)への送金はできません。
所在国だけでなく取引所ごとの方針も追加されるでしょうが、トラベルルールの発動以後「この取引所には送金できない」という相手先がやや増えています。
入金・出金に時間がかかることがある
「送金はできるものの、送金に時間がかかる」というケースも増えます。
情報をただ共有するだけでなく「問題がないことを確認してから、送金を完了させる」というケースもあるためです。



そのため、送る側にとっては出金に時間がかかり、受け取る側にとっては入金(着金)に時間がかかることがあります。
実際に時間がかかるかどうかは、金額やその人の過去の履歴、どの取引所に送るかなどの諸条件によって異なります。
審査によって送金不可となることも(通常は問題なし)
以下のようなケースでは、審査によって「送金不可」となる可能性もあります。
- 相手か自分が、脱税などの疑いを持たれている
- 相手の取引所やウォレット自体に疑いが持たれている
ほとんどの場合は、相手か自分のどちらか(もしくは両方)が疑われているパターンです。
送る先の取引所やウォレットによっては、その取引所やウォレット自体が怪しまれ、ストップされるということも考えられます。
後者のパターンはめったにないものの、例えば2023年に破綻したFTXで、破綻の噂が流れ始めた段階では、こうしたパターンもあり得たでしょう。



前者のパターンについても、脱税やマネーロンダリングを疑われることは、普通のトレーダーならあり得ません。
そのため、トラベルルールによって送金不可となることは「ほぼない」と考えてください。


国内仮想通貨取引所の対応状況一覧


トラベルルールに関して特に気になるのは「国内取引所から海外取引所への送金はどうなるのか」という点でしょう。
ここでは、以下の国内取引所のトラベルルールへの対応状況を解説します。
- bitFlyer(ビットフライヤー)
- Coincheck(コインチェック)
- Zaif(ザイフ)
- bitbank(ビットバンク)
- GMOコイン
- SBI VC Trade(SBI VC トレード)
- LINE BITMAX(ラインビットマックス)
- BITPoint(ビットポイント)
- Binance Japan(バイナンスジャパン)
2025年時点で最新の情報なので、ぜひ参考にしてみてください。
bitFlyer(ビットフライヤー)


bitFlyerは、国内の取引所ランキング1位(世界ランキング22位)の取引所です。
トラベルルール開始以降も、bitFlyerは以下の海外取引所に送金できます。
- Houbi Global
- Kraken
- COINBASE
- OKX
- Binance US
逆に送金できない海外取引所は以下の通りです。
bitFlyerは国内取引所への送金も厳しく制限しており、国内で送金できる先はCoincheckのみです。
Coincheck(コインチェック)


Coincheckは国内ランキング2位(世界ランキング47位)の取引所です。
Coincheckはトラベルルール開始以降も、以下の通り多くの海外取引所に出金できます。
逆に出金できない海外取引所は以下の通りです。
- MEXC
- ZOOMEX
主だった海外取引所の大部分に出金できるため、トラベルルール以後、特に海外送金をしやすい国内取引所といえます。
Zaif(ザイフ)


Zaifは国内取引所ランキングの3位(世界ランキング54位)の取引所です。
Zaifでは、トラベルルールのスタート以後も以下の海外取引所に出金可能です。
逆に出金できない海外取引所は、以下の通りです。
- COINBASE
- Kraken
- Binance US
Zaifは銘柄の制限もなく、Zaifで取り扱っている銘柄はすべて、どの国の取引所にも送金できます。
bitbank(ビットバンク)


bitbankは国内ランキング4位(世界ランキング61位)の取引所です。
トラベルルールの施行後も、bitbankは以下の海外取引所への出金が可能です。
逆に以下の海外取引所への出金はできません。
- Kraken
- COINBASE
- Binance US
bitbankもZaif同様、取り扱っている銘柄はすべて送金できます。
GMOコイン


GMOコインは、トラベルルールの通知対象国の海外取引所への出金には対応していません。
しかし、以下の通り通知対象国でない海外取引所への出金には対応しています。
以下は出金できない海外取引所で、OKX以外は全て通知対象国の取引所です。
- MEXC
- ZOOMEX
- Gate.io
- OKX
通知対象国の方が出金できないことは意外かもしれませんが、GMOコイン以外の国内取引所でも多く見られるパターンです。
SBI VC Trade(SBI VC トレード)


SBI VCトレードは、トラベルルール以降海外取引所への送金が特に難しくなっている取引所です。
現在、送金可能な海外取引所は以下の2社のみです。
以下の海外取引所は全て送金不可となっています。
- OKX
- ZOOMEX
- BTCC
- Kraken
- COINBASE
- DEEPCOIN
- Binance US
SBI VCトレードもGMOコインと同じく、通知対象国の取引所には送金できず、対象国でないBybitとBitgetには送金できます。
LINE BITMAX(ラインビットマックス)


LINE BITMAXのトラベルルールへの対応状況は、SBI VCトレードとよく似ています。
送金可能な海外取引所は、以下の2社のみです。
そして、以下の海外取引所は全て送金不可となっています。
- Binance US
- BTCC
- COINBASE
- DEEPCOIN
- Kraken
- OKX
- ZOOMEX
SBI VCトレードと対応状況が似ている理由は、親会社が大企業であることが大きいと推測されます。
BITPoint(ビットポイント)


BITPointもトラベルルールの通知対象国の取引所には送金できません。
代わりに、以下のような通知対象外の国の取引所には送金できます。
送金できない主な取引所は、以下の通りです。
- Kraken
- COINBASE
- Binance US
BITPointはSBIグループの取引所ですが、SBI VCトレードとは対応状況がやや異なっています。
Binance Japan(バイナンスジャパン)


Binance Japanは、世界の取引所ランキング1位のBinanceが設立した、日本版の取引所です。
元CEOであるチャンポン・ジャオ氏がマネーロンダリングの幇助によって米国で禁固刑の判決を受けた影響か、海外取引所への出金が一切できません。
- なし(プライベートウォレットのみ)
プライベートウォレットには出金できるため、MetaMaskなどを活用することになります。
以下の通り、Binanceのアメリカ版である「Binance US」にも送金できません。
なお、Binance Japanは海外取引所だけでなく、国内取引所が相手でも全て送金不可です。
ここまで極端に送金に対して厳しいのは、トラベルルールの影響ではなく、前述の元CEOの逮捕による影響が大きいでしょう。
トラベルルールの回避方法


トラベルルールは一般的なトレーダーの方々にとっては、何も問題のないルールです。
しかし「入出金に時間がかかるのが嫌だ」などの理由で、どうしても回避したいというケースもあるでしょう。
上記のようなケースで、トラベルルールを回避する方法は以下の通りです。
- プライベートウォレットを利用する
- P2P取引(個人間取引)で入金する
- 通知対象国でないオフショア取引所を使う
上記の方法を参考にするのは、あくまで「入出金のスピードを速めたい時」などのケースに限定しましょう。
プライベートウォレットを利用する
プライベートウォレットとは「ウォレットアプリ」のことで、売買機能を持たない「ウォレット専用のアプリ」を指します。
特に有名なのはMetaMask(メタマスク)やLedger(レジャー)などです。
ウォレットアプリはトラベルルールの対象外であるため、双方の情報が通知されません。



そのため、間に1回ウォレットアプリを挟めばトラベルルールを回避できますが、代わりにガス代(送金手数料)が余分にかかります。
Bybitが導入しているウォレットであるSlash(スラッシュ)の場合、Bybitとの送受金であればガス代の節約が可能です。
そのため、トラベルルールを回避しながらガス代を節約したい場合は、Bybitを利用するのがおすすめです。
最もメジャーなのはMetaMask(メタマスク)で、ほとんどの海外取引所・国内取引所は、MetaMaskとの送受金が可能です。
P2P取引(個人間取引)で入金する
P2P取引とは、海外取引所が提供している個人間取引のサービスです。
他のトレーダーと直接仮想通貨を売買できるサービスで、相手が対応していれば、以下のようにあらゆる決済方法を利用できます。
- 銀行振込(日本の銀行口座)
- PayPay(ペイペイ)
- LINE Pay(ラインペイ)
- 各種電子マネー
メルカリのように間に取引所が入るため、安全も確保されています。
そして、上記の方法で仮想通貨を購入することで、海外取引所に対して日本円で入金が可能です。



P2P取引もトラベルルールの対象外であるため、この方法なら国内取引所からの送金時の通知を回避できます。
P2P取引はBybit・MEXC・Bitgetなどの大手が対応しています。
通知対象国でないオフショア取引所を使う
通知対象国ではない国に拠点を構えている「オフショア取引所」を利用すれば、トラベルルールは適用されません。
そして、意外にも国内取引所の大部分はオフショア取引所への送金を規制していません。



以前はDMMビットコインが唯一規制していましたが、同社は現在廃業(SBI VCトレードに事業譲渡)しています。
金融庁の認可を受けている国内取引所の大部分が対応しているため、法的なリスクなどもありません。
各海外取引所の所在国とトラベルルール対応一覧


主な海外取引所の所在国と、トラベルルールへの対応を一覧でまとめると以下の通りです。
取引所 | 所在国 | 導入システム |
---|---|---|
Bybit | UEA(アラブ首長国連邦・ドバイ) | TRUST(予定) |
MEXC | シンガポール | Sygna |
Bitget | シンガポール | TRUST |
Zoomex | シンガポール | 対応なし |
Binance | セーシェル共和国 | 対応なし |
OKX | セーシェル共和国 | 対応なし |
導入システムとは、情報を多国間・多社間で共有するためのシステム(データベース)です。
現状、主なトラベルルールのシステム(ソリューション)は、以下の3種類です。
- TRUST
- SYGNA
- GTR
最もメジャーなのは、BybitやBitgetが採用しているTRUSTです。
海外取引所のトラベルルールに関してよくある質問


海外取引所のトラベルルールに関して、多く寄せられる質問は以下の通りです。
- 最新のトラベルルールとは?
- オンカジに暗号通貨を送金する方法は?
- Bybitのトラベルルール対応は?
それぞれの質問に詳しく回答していきます。
最新のトラベルルールとは?
2025年時点で最新のトラベルルールは「2023年6月1日」に改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)です。
同法は2025年6月1日にも改正されていますが、トラベルルールの部分は変わっていません。



改正が決定したのは6月以前で、施行は6月1日からです。
最新のトラベルルールの内容や各取引所の対応常用は、本記事で説明してきた通りです。
オンカジに暗号通貨を送金する方法は?
オンラインカジノに暗号通貨を送金する方法は、通常の送金と同じです。
オンカジの自分の口座のアドレスやQRコードが発行されるため、そのアドレスやQRコードに対して送金します。



オンカジごとに対応している仮想通貨の銘柄が異なりますが、BTC・ETH・USDT・XRPなどは多くのオンカジが対応しています。
近年では「暗号資産専門」や「暗号資産メイン」というオンカジも増えており、暗号資産での送金はこれからさらにしやすくなるでしょう。
Bybitのトラベルルール対応は?
Bybitはトラベルルールの通知対象国ですが、自主的にトラベルルールに対応しています。



トラベルルールの情報共有に使われるシステムは3種類ありますが、Bybitが導入を進めているのはTRUST(トラスト)です。
そして、トラベルルール施行後、Bybitへの送金が可能となっている国内取引所は、以下の通りです。
- bitFlyer
- Coincheck
- bitpoint
- bitbank
- GMOコイン
- SBI VCトレード
- BitTrade
逆にBybitへの送金ができない国内取引所は、以下の通りです。
- コイントレード
- Zaif
- DMMビットコイン(現在は廃業)
上記の通り、Bybitはトラベルルールに対応しているため、多くの国内取引所からの送金が可能です。
もしBybitへの送金で情報を共有されるのを避けたい場合は、MetaMaskなどのウォレットアプリを間に挟みましょう。
【まとめ】海外取引所のトラベルルールとは?


海外取引所のトラベルルールとは「仮想通貨を送る人と受け取る人の情報が、加盟国で共有される仕組み」です。
特にトレーダーの側で負担が増えることはなく、ただ「自分と相手の情報が共有されるだけ」です。
トラベルルールのスタート以降、取引所ごとに送金をできない相手先の取引所が出ているため、その点がデメリットといえます。



また、受け取る相手や取引所によっては、送受金の審査に時間がかかることもあります。
トラベルルールを回避したい場合は、プライベートウォレットを間に挟むのが一つの選択肢です。
そして、BybitはプライベートウォレットのSlashを導入しているため、Slashを経由してトラベルルールを回避できます。



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世界ランキング2位の大手取引所で、日本人トレーダーが最も多く信頼できる取引所なので、ぜひチェックしてみてください。
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